元日本代表のセッターで、秋田県の強豪である雄物川高校の監督をされていた宇佐美大輔氏が、部員に対する度重なる暴力行為で懲戒免職された。
私の世代だと、日本を代表するセッターと言えば宇佐美大輔氏
というくらいトップレベルの選手で、
体罰というよりか、完全な暴力行為に走っていることは全く知らなかった。
元日本代表というトップレベルの選手が、このような懲戒免職を食らってしまうという
色々とショッキングな事案を紐解いていく。
宇佐美大輔氏のバレーボール歴 ※Wikipediaより要約
小学校時代はミニバスをしていたが、父で雄物川高校校長かつ雄物川高校バレー部監督であった宇佐美義和氏の勧めでバレーボールを始めた。
高校時代まではエースアタッカーとして活躍していたが、東海大学に進学してから本格的にセッターへと転向。
そして、2001年に日本代表に初選出され、2002年に今は廃部してしまったNECブルーロケッツに入団した。
2006年にはパナソニックパンサーズ(現大阪ブルテオン)へと移籍。
2009年のグラチャン(グランドチャンピオンズカップ)では32年ぶりの銅べダル獲得に貢献、パナソニックパンサーズの黄金時代にも貢献した。
2012/2013シーズンをもって引退。
引退後は公立高校教員となり、2013年~2014年では秋田県立大館鳳鳴高校の教員となったが、
翌年には運よく?シナリオ通り?雄物川高校へと配属された。
そして、現在に至る。

雄物川高校の実態
秋田県立雄物川高校は、2031年には平成高校・増田高校と統合され閉校する予定である。
その影響もあってか、生徒数は年々減少しており、最近の正式なデータは存在しないものの
2021年の入学者は53名で、全校生徒は150人~160人程度だった模様。
そして、バレー部の部員数は30人弱ということで
全校生徒の約20%はバレー部の生徒のようで
バレー部によって保っていたと言っても過言ではないらしい。
生徒数を確保するためにバレー部の影響力は高く、
学校内で宇佐美氏の立ち位置も相当高かったんだろうなと、想像に難くない。
ましてや宇佐美大輔氏の父親である宇佐美義和氏は元雄物川高校の校長でもあり、バレー部の監督でもあり
秋田県の教育委員会やバレーボール協会でもかなりの影響力があったことは間違いないのである。
それは公立高校である雄物川高校に1年で息子を呼び寄せることができた、
それだけで物語っているのだ。

宇佐美大輔氏が行った所業
毎日新聞の記事を読むと
「宇佐美監督は5月上旬ごろ、体育教官室に練習ノートを提出しに来た被害部員に対し、提出場所が間違っているとして履いていた靴で頭をたたいたり、胸ぐらをつかみ床に押し倒したりしたという。その後も、練習でミスをしたなどの理由で、周囲に誰もいない体育館奥のトレーニングルームに被害部員を連れ込み、暴言を吐きながら床に押し倒して胸ぐらを掴んだ」
元記事:https://mainichi.jp/articles/20251007/ddm/041/040/097000c
また、Wikipediaによると
「体罰に当たると認識していたが、それ以上になんとか頑張らせたいという思いが強く、やってしまった」と保護者に説明していたが、被害部員の証言では宇佐美は部員を集めた場で「言葉が通じない人間は動物と同じだから、殴ったとしてもそれは体罰ではなくて、しつけだ」などと発言していたという。
とある。
正直な話、個人的にはビンタくらいならまだ許せる範囲だが、
別の記事には「9月の遠征中には重さ3キロのトレーニング用ボールを顔面に投げつけられ、口の中を切って出血したこともあった。9月中旬にもトレーニングルームに連れ込まれ、数十回にわたり平手や拳で顔を殴られたり、腹部を蹴られたりしたという。」
元記事:https://mainichi.jp/articles/20251006/k00/00m/040/244000c
もはやしつけとかいうレベルではなく、完全な暴力である。
結局は、懲戒免職というかなり重い処分となったものの、傷害事件として起訴されてもおかしくないレベルの暴力行為である。
懲戒免職とは
そもそも「懲戒免職」とは、公務員を失職させる懲戒処分であり、民間企業でいう懲戒解雇と同じで
要は「クビ」である。
懲戒免職された公務員は、退職手当の全額または一部が支給されず、年金についても一部が不支給となることもあるらしい。
人事院に指針においては、「免職」、「停職」、「減給」、「戒告」という4つの懲戒処分があり
「免職」はその中で最も重い処分である。
日本という労働者を簡単には解雇できない中で、ましてや地方公務員である教員を免職したというのは
教育委員会側もかなり重い事案として処理したのではないだろうか。
参考サイト:https://mainichi.jp/articles/20251006/k00/00m/040/244000c
体罰の定義
東京都教育委員会が体罰の定義について、ガイドラインを示している。

なかなか分かりやすいガイドラインだとは思うが、
このガイドラインでいう「適切な指導」だけで、生徒を教育できるかどうかは難しいところだと感じる。
私も多少なり近年の教育現場を見た立場で言うと、
比較的偏差値の低い中学や高校で、そんなに物分かりが良い生徒ばかりではないということである。
ましてや教員の立場がどんどん弱まっている中で、
教員が何もできないと分かっているからこその態度を取ってくる生徒もいる。
教員側の目線に立ってみると、そういう体罰やら暴力で支配するという気持ちになってしまうことも
わからなくはないという非常に難しい感情になる。
話せば分かるというのは本当に綺麗ごとで、現場を知らない人の意見であり
話をしても全く通じない生徒が一定数いるのは事実なのである。
部活動と体罰問題
今回の雄物川高校に限らず、少し前には市立船橋や日本航空、市立尼崎などバレー界での体罰問題が後を絶たない。
バレー界に限らず、大津高校サッカー部や広陵高校野球部という、違う部活動の強豪校でも問題となっている。
そもそも、勝利至上主義が原因なのか。
確かに、根本的な部分では勝つためにという考えはあるかもしれないが、
単純な話、自分(監督)が思ったように、思い描いたような動きを生徒ができないからだと考えられる。
特に元日本代表で身体能力が高く、バレーIQも高かった宇佐美大輔氏にとって
「なんでそんなこともできないんだ!」
「さっき言ったじゃねえか!!」
「どうしてそんな動きをするんだ!!!」
「なんで俺が言ったことが理解できないんだ!!!!」
※上記は妄想です…
こういった理解しがたい現状に耐えられなかったんじゃないだろうか。
強豪校として全国大会に出場し、結果を残さないといけないプレッシャー。
元日本代表という肩書きで、指導者としても結果を残さないといけないというプライド。
それを理解してくれない生徒たち。
「勝利」という色々な意味で重い十字架を背負ってしまった人生なのかもしれない。
そう考えると、スポーツの監督というのは非常に孤独な職業だと感じる。


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